医師
病気やケガをした人を治療する医師が持つ道具といえば
聴診器 | 心臓の鼓動や肺の呼吸など、聞こえにくい小さな音を聴きます。救急外来や病棟での診察には必要不可欠です。 |
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ペンライト | 対光反射※1や、口腔内(こうくうない)※2の所見を取るのに使います。 |
打腱器 | 神経の診察をするときにひじや手首、ひざの関節付近の腱を打腱器で叩いて反応を調べます。 |
※1 対光反射:瞳孔(どうこう)反射の一つで、目に光をあてて瞳孔の直径を光の強さにより変化させ、網膜(もうまく)に届く光の量を調節する反射のこと。
※2 口腔内:口からのどまでの部分。
医師は、あらゆる医療の場で、病気やケガに苦しんでいる人を治療し、回復をうながします。その仕事は、内科、外科、小児科、産婦人科など、専門分野ごとに細かく分かれています。また、総合診療医といって、細かな専門分野に分かれずに診療を行う医師もいます。
どの分野でも最初に患者を「診察」し、結果をふまえて、病状を説明して治療や手術をします。
医師は、病気やケガの診断や治療、予防、リハビリテーションに当たる「臨床医」と、基礎医学を研究する「研究医」と、大きく2つに分かれます。
働き方も自分で医院を開業するか、病院や診療所に勤めるか、大きく2つに分かれます。いずれも非常に責任のある役割を果たしています。
一緒に仕事をする仲間たちを引っ張り、時に患者や家族を元気づけることも必要になる医師は、リーダーシップと人を思いやる優しさが求められます。
働く場所
総合病院(臨床医)
総合病院(英語:General Hospital)は、多くの診療科と病床を備えている、地域の中心となる病院のことです。外来診察のあとに検査や入院が必要となった場合でも、病院内で対応できる可能性が高くなります。また、複数の疾患(しっかん)※1をかかえているなど、単科病院では対応できない患者を受け入れることができます。
※1 疾患:病気。
診療所(臨床医)
医院、クリニック(clinic)とも呼ばれ、主に外来の患者を診察します。医療法※1では、患者が入院する施設を伴わないもの、または19人以下の患者が入院できる施設を伴うもの(有床診療所)を診療所と定義しています。診療所は、主にプライマリ・ケア※2の役割を担い、カゼや腹痛など身近な病気の外来診療を中心に行っています。また、普段から気軽に受診でき、必要であれば総合病院を紹介するといったようなかかりつけ医の役割も持っています。
※1 医療法:病院・診療所・助産所の開設や管理などを定めた法律。
※2 プライマリ・ケア:常日頃から何でも診て相談に乗ってくれる身近な医師による総合的な医療。
介護老人保健施設(臨床医)
介護老人保健施設は、「老健」とも呼ばれ、近年、増加しています。老健は、病気やケガなどで入院した高齢者が、退院後にリハビリなどを行い、在宅復帰を目指す施設です。看護師、介護士、理学療法士、栄養士など、様々な職種のスタッフがチームとなって入所者をサポートします。医師は、スタッフと協力して入所者の健康管理を行い、中心的な役割を担います。
※「特養」とも呼ばれる特別養護老人ホームは、原則として自宅での生活が困難な要介護3以上の高齢者が対象です。
保健所(公衆衛生医師)
地域保健法に基づき全国の都道府県や政令指定都市・中核都市は、保健所を設置することが定められています。その際、保健所長は原則として医師であることも定められています。保健所で働く医師「公衆衛生医師」の仕事は、感染症の予防、災害時の住民の健康対策、地域保健と健康づくり、さらには地域包括ケアシステムの推進や健康危機管理など、保健所が調整役となり関係機関等と協働しながら支え合う基盤づくりなど、多岐にわたります。近年では、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策の中心的な役割を担っています。
製薬会社(メディカルドクター)
製薬会社に勤務して、薬の研究開発や新薬の安全性・有効性を検証し、その結果を関係機関に提示していく仕事です。メディカルドクター(Medical Doctor)は、「臨床開発」「安全性評価」「市販後調査(メディカルアフェアーズ:Medical Affairs)」と、3つの部門にかかわります。
大学や研究所などの専門機関(研究医)
大学や研究所などで、まだ治療や完治が困難な病気の研究などを行います。また、次々に新しいウィルスを媒介して発生する感染症の予防のための研究も、研究医の役割です。研究や実験の成果は、論文にして発表します。
開発途上国(国際協力医)や日本国内のへき地や離島
国際連合(WHO、ユニセフ等)などの国際機関、外務省の国際協力機構(JICA)など政府機関、民間のNGO(非政府組織)、民間の企業(開発コンサルタント会社など)などでも、医師を雇用しています。そして、開発途上国などで国際協力を行っています。
また、国内のへき地・離島で、特に医師がいない地域では、自治体などから派遣された医師が医療に従事しています。
働く場面
地域(訪問診療医:訪問医療)
地域における訪問診療とは、病院へ通うことが困難な患者宅に、医師が直接訪問して診療することをいいます。病院や診療所と同じように診療計画を立て、定期的に健康管理を行い、体調の悪化を未然に防ぐ役割も持っています。通院の負担軽減、24時間365日体制の対応、診察や治療に加え、予防接種や薬の処方、栄養状態の管理など、体調に関わることであれば何でも相談できるメリットがあります。
これとは別に、急に体調が悪くなった時など、患者や家族の要請を受けて訪ねる場合は「往診」といい、「訪問診療」とは少し意味が異なります。
学校(学校医:健康診断)
学校保健安全法では、学校ごとに学校医をおくことを定めています。医師は、学校の委嘱を受け、その学校の衛生事務や児童・生徒の健康診断、感染症が流行した場合の助言を行い、地域の医師会や行政とともに子どもたちを見守ります。
企業(産業医:健康相談や職場巡視等)
労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者が働く事業場の事業者に、産業医の選任を義務付けています。産業医は事業主と契約し、企業内で職場巡視を行い、作業環境による健康リスクの評価を行い、職場環境の改善を図ります。それだけでなく、健康教育・労働衛生教育など、職場に関係する多岐にわたる仕事をします。
警察(警察協力医または警察医:検死等)
警察から嘱託を受けて医療業務や検死などに従事する医師を警察協力医、または警察医といいます。
人が亡くなった時には医師が死亡診断書を作成します。
病気で人がなくなる時には、かかりつけ医や入院中の担当医が死亡診断書を作成します。しかし、死亡からかなりの時間が経っていそうな場合や、突然死亡してしまい死因が不明の場合、死亡診断書は作成できません。その場合、変死や異常死と判断され、警察官による検視の後、死体検案依頼を受けた医師によって死体検案書が作成されます。
検死をしても死因が不明なままの場合は、行政解剖が行なわれます。こちらは「監察医」が担当します。
災害現場(DMAT、JMAT)
DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)は、災害の発生現場に迅速に向かい、救助活動とともに医療活動を行います。発生直後おおむね48時間以内に活動できるよう、医師を含む複数人の医療スタッフで構成され、関係機関と連携しながら活動します。
DMATは、基本的に1チームおよそ5人、医師1人と看護師2人、業務調整員2人(救急救命士、薬剤師など医療職および事務職員)で構成されます。日本DMAT(厚生労働省によって発足)と都道府県DMATの2つの組織があります。
DMATとは別に、日本医師会が組織するJMAT(Japan Medical Association Team:日本医師会災害医療チーム)もあります。こちらは、DMATを引き継ぐ形で活動し、現地の医療体制が回復するまで医療支援を行います。
スポーツやイベント(スポーツ医・イベント派遣ドクター)
スポーツによるケガの治療だけでなく、予防や栄養など、アスリートやスポーツをする人々をメンタル面からもサポートするのがスポーツドクターです。
スポーツドクターになるためには、医師免許以外にも資格が必要です。日本での資格は、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本医師会認定健康スポーツ医があり、それぞれ特徴があります。
また、マラソン大会や駅伝大会、モータースポーツなど、創傷や急変のリスクがあるイベントでも救護として医師が待機します。
仕事の様子を動画で見てみよう
医師は、人の命をあずかる責任の重い仕事です。医師になるためには、大学の医学部で6年間基本教育を学び、医師国家試験に合格する必要があります。医師になった後も、臨床研修などの研修を行うなど、勉強を続けていきます。
インタビュー動画 実際に見てみよう
ドラマ | コード・ブルー ~ドクターヘリ緊急救命~ | |
漫画またはアニメ | ブラック・ジャック手塚治虫 | 秋田文庫ほか |
漫画またはドラマ | ブラックジャックによろしく佐藤秀峰 | 小学館ほか |
漫画またはドラマ | コウノドリ鈴ノ木ユウ | 講談社 |
漫画またはドラマ | 監察医 朝顔作画:木村直巳/原作:香川まさひと/監修:佐藤喜宣 | 実業之日本社 |
漫画またはドラマ | 医龍作画:乃木坂太郎/原案:永井明/監修:吉沼美恵 | 小学館 |
漫画またはドラマ | JIN-仁-村上もとか | 集英社 |
漫画またはドラマ | Dr.コトー診療所山田貴敏 | 小学館 |
360°ビュー
確認ドリル
心臓の音や肺の呼吸など、微妙な音を聴く道具を打腱器という
医師の仕事は、「臨床医」と「研究医」と、大きく2つに分かれる
医師になるためには医学部で学び、医師国家試験に合格する必要がある
医師は、医学知識だけがあればよい
保健所で働く医師を公衆衛生医師という
DMATは、日本DAMTと市町村DMATと2種類ある
スポーツドクターになるためには、医師免許以外にも資格が必要だ
医師免許を取得した後、大学病院や総合病院で研修をする