看護師
医師の診療の補助をしたり、患者の世話をしたりすることが主な仕事の看護師が持つ道具といえば
ボールペン | 最近は、電子カルテ化が進んでいますが、数値を書き留めたり、サインをしたり、現場に欠かせないアイテムです。記入する時に、色分けができる3色ボールペンが便利です。 |
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医療用ハサミ | 医療用のテープや薬の袋を切るなど、いろいろな場面で使います。先が丸くなっているものやガードが付いているデザインのものもあります。 |
秒針のある時計 | 呼吸数や脈拍測定、不整脈がある場合など、秒数をみることが多い看護師には、同じ時計でも秒針のあるものが便利です。 |
医師の仕事を助け、赤ちゃんから高齢者まで、病気やケガを抱えている人の治療や生活をサポートしたり、患者や家族の相談に応じたりします。男性看護師も増えています。
働く場所
看護師は、病院や診療所のほかにも、訪問看護ステーションや介護老人保健施設(老健)、介護老人福祉施設など、近年活躍の場がどんどん広がっています。
病院(外来看護師)
医師の外来診療を補助します。病気を持つ人、あるいはケガや体調不良の人が訪れる外来には、1日に多くの人が訪れます。
例えば、腹痛を訴える患者ならベッドに寝かせ、医師が診察しやすいように患部が見えるようにしたり、ケガをした患者の包帯を外し、治療に必要なものを用意したり、患者の血圧測定、採血、注射、点滴などの仕事をします。
また、医師が決めた治療方針を患者へ伝えたり、入院が決まった患者の病状や検査結果を入院先の病棟スタッフと共有したりすることも重要な仕事になります。
病院(救急外来看護師)
夜間・休日を問わず24時間体制で、救急診療を行う救命救急センターで働く看護師です。命の危機がせまる現場では、医師と同様、判断力とスピード、確かな技術が求められます。心臓や呼吸が止まりそうな患者への救急蘇生処置、外傷や骨折の処置などを介助します。ドクターヘリや災害現場などで、向かった先で処置の優先順位をつける「トリアージ」を医師と行うのも救急看護師の役割です。
病院(病棟看護師)
24時間交代制で入院患者の看護を行います。担当する患者それぞれに立てる「看護計画」に沿って、入院中の生活のすべてをサポートします。
例えば、注射、点滴管理、ガーゼ交換、投薬などの医療処置のほか、医師の指示に従って血液検査や尿検査、治療や検査場所への移動介助などを行います。
ほかにも定期的に検温、呼吸器・心電図モニターのチェックをして、変化を観察し、カルテに記録します。患者の食事や排泄の介助、清拭(せいしき)※1、ベッドまわりの整頓をし、入院患者と家族の相談相手となるのも病棟看護師の仕事です。
勤務は、2交代もしくは3交代の交代制勤務で、土日の出勤や夜勤、早朝勤務や深夜勤務がある場合もあります。
※1 清拭:体を拭いて清潔に保つこと。
病院(手術室看護師)
「器械出し(直接介助)」と「外回り(間接介助)」と、大きく2つの役割があります。
「器械出し」は、手術の進行がスムーズにいくよう必要な機器・機材を医師にタイミングよく手渡す仕事です。
「外回り」は、手術前・手術中・手術後の患者のケア、病棟看護師やICU看護師への引き継ぎ、輸血血液の管理、手術室の室温や照明の調整、物品の補充、各種生体情報モニターにより患者さんの状態をモニタリングし続ける(手術中)など、器械出し以外の仕事をします。
また、執刀医や麻酔科医、ほかの部署との連携も手術室看護師の重要な仕事です。手術終了前には、器械出しと外回り看護師が協力し、器械・針・ガーゼなどの数のカウントを行い、患者の体内への異物残留防止にも努めます。
病院(ICU看護師)
大手術直後、交通外傷、多臓器不全など、「超急性期」と呼ばれる、非常に病状の重い患者が集まるICU(Intensive Care Unit:集中治療室)に勤める看護師です。
ICUで24時間集中治療を行う患者は、いつ急変してもおかしくない状態にあります。異常の早期発見が最優先事項です。さまざまなモニターによる情報や、尿量の確認などを通して全体をよく観察して、体内で起きていることを予測することで、異常の早期発見につなげます。
人工呼吸器や輸液ポンプなどで患者の全身管理も行うため、データから患者の状態を読み取る知識や、さまざまな医療機器を扱えるスキルが必須となります。
病院(NICU看護師)
NICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室)では、早産などで産まれた低体重児や、先天性の重い病気をもつ新生児に、24時間体制で医療を提供します。NICU看護師は、新生児と母親、家族のケアを担当します。
バイタルサイン(血圧・脈拍数・呼吸速度・体温など)のチェック、呼吸器の管理、点滴や経鼻(けいび)栄養チューブが正しく装着されているかの確認などを、定期的に行います。また、母親の代わりに2~3時間おきにミルクを与えたり、おむつ交換、沐浴、清拭などを通して赤ちゃんを清潔に保ったりするのもNICU看護師の役目です。
病院(産科看護師)
命の誕生「出産」を中心に、その前後を医師と助産師とともに、ケア・サポートします。
医師の診察の補助はもちろん、妊娠中の生活指導、健診の案内、さらには不安定になりがちな妊産婦の精神的な支えとなり、心身のケアとサポートを切れ目なく行います。
妊婦のバイタルサインチェック、体重・腹囲計測、各種検査の補助(採血など)、診察の介助、エコー診断の準備など、分娩時のモニターチェック、入院時のケア(検温・点滴の管理、清潔ケア)、出産後の母子のケア(検温・採血、沐浴・授乳の指導)などがあります。
保育園や幼稚園、認定こども園
保育園や幼稚園、認定こども園が職場です。アレルギーや内服のある園児の管理、園児の健康を維持するための見守りのほか、風邪や感染症予防の対策などを行います。ケガや病気になったときの判断も求められます。交通安全など安全管理も大切な仕事です。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)は、病気や骨折などで入院した高齢者が、退院後にリハビリなどを行い、自宅に帰ることを目指す施設です。医師、介護士、理学療法士、栄養士など、さまざまな職種のスタッフがチームとなって入所者をサポートします。看護師は、主に医療的ケアや日常生活動作(ADL: Activities of Daily Living)の維持・改善に向けた支援を行います。
※「特養」とも呼ばれる特別養護老人ホームは、自宅での生活が困難な要介護3以上の高齢者が対象です。
介護施設
介護施設には、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、グループホーム、デイサービスなど、さまざまな種類があります。いずれも治療や退院が目的の病院とは異なり、介護施設は生活の場として、入居者・利用者が、その人らしく暮らせるかが大切なポイントになります。医師が常駐しない施設も多いので、看護師は常日頃の健康維持に加えて、感染症対策なども中心となって取り組みます。
日々の仕事の例:バイタルサインチェック、配薬準備、服薬管理、インスリンの管理・投与、吸引、経管栄養の管理、褥瘡(じょくそう)※1の処置、在宅酸素療法の管理、ストーマ(人工肛門)の管理・ケア、訪問診療時の診察介助、感染症対策、転倒・転落防止などの安全対策、看取り、ターミナルケア
※1 褥瘡:「床ずれ」とも呼ばれ、ベッドマットや布団、車いすなどと接触する部分の血流が悪くなったり、滞ったりすることで、皮膚の一部がただれたり、傷ができてしまうこと。
治験コーディネーター
治験とは、新しい医薬品を開発する際に、人にどのような効果があって、いかに安全かを確かめる段階で、臨床試験を行うことをいいます。
治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)は、治験業務の現場で治験を依頼する製薬会社と、治験を行う医療機関の間に立ち、全体を統括します。
看護師資格を活かしながら治験コーディネーターとして働く場合、大きく2つに分けられます。一つ目が病院(院内CRC)です。2つ目が、治験施設支援機関(SMO:Site Management Organization)です。
いずれも仕事は、治験のための業務の流れがわかる図や症例を管理するための書類づくり、治験テストを受ける方への対応、治験を担当する医師との連携など、多岐にわたります。
ツアーナース
園児の遠足、小・中学生の修学旅行や合宿などに同行して、健康管理を行う仕事です。企業の研修旅行やシニア旅行、海外旅行への添乗などの仕事もあります。
テーマパークなどの救護室
遊園地やテーマパークに訪れた人または従業員に、万が一の事故やケガ、具合が悪くなった時に応急手当てをします。必要があれば、救急車を呼び病院へ搬送します。
献血ルームまたは献血バス
献血ルームは、日本で唯一、献血事業を行っている日本赤十字社にあります。社員として、献血ルームや献血バスで働きます。献血ルームに勤務する看護師を献血看護師といいます。
健診・検診センター
定期健診、ガン検診、人間ドックなどを行う健診・検診センターに、健診や検診のために来院する人を看護します。検査がスムーズに行われるようにすること、検査に対する不安を軽減すること、異常の早期発見をすることなどが主な役割です。
事前の問診、検査の介助、採血、身長・体重・視力・聴力・血圧・肺活量測定、尿検査、眼底写真・眼圧測定、心電図、内科・婦人科診察補助などがあります。
美容クリニック
ケガや病気の治療が目的の病院とは異なり、美容医療を専門に扱う医療機関を「美容クリニック」といいます。「美容整形外科」と「美容皮膚科」の大きく2つに分けることができます。
働く場面
地域(訪問看護)
訪問看護や在宅ケアなどを行っているデイケアセンターや訪問看護ステーションなど、地域の福祉施設で利用者の健康をサポートしたり、保健所、企業の医務室(産業看護師または企業看護師)、養護教諭の資格がなくても仕事ができる大学や専門学校など学校の保健室でケガや病気の処置をしたり、妊産婦への保健指導・相談、子育て支援など、地域医療の担い手として働きます。
災害現場(DMAT、JMAT等)
災害の発生現場で、救助活動とともに医療活動を行います。発生直後おおむね48時間以内に活動できる、専門的な訓練を受けた災害医派遣医療チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)の看護師として、関係機関と連携しながら活動します。
DMATは、基本的に1チームおよそ5人、医師1人と看護師2人、業務調整員2人(救急救命士、薬剤師など医療職および事務職員)で構成されます。日本のDMATは、日本DAMT(厚生労働省によって発足)と都道府県DMATの2つがあります。
さらに日本医師会が組織する日本医師会災害医療チームJMAT(Japan Medical Association Team)もあります。こちらは、医師1人、看護職員(看護師や救急救命士)2人、医療保険事務職員1人を1チームとしています。DMATとの違いは、活動開始時期と派遣期間です。災害発生から48時間以内に被災地へ派遣され、3日程度で撤退するDMATを受け継ぐ形で、JMATが避難所や救護所における医療活動を中心に、現地の医療体制が回復するまで医療支援を行います。
イベント対応
スポーツ大会、マラソン大会、駅伝大会、モータースポーツなど、ケガや心肺停止など予測できない急激な変化などリスクがあるイベントに、救護看護師として待機します。
仕事の様子を動画で見てみよう
看護師になるためには、国家資格「看護師資格」が必要です。文部科学大臣指定の学校または厚生労働大臣指定の看護師養成所を卒業し、看護師国家試験に合格すると看護師になれます。
インタビュー動画 実際に見てみよう
漫画 | おたんこナース佐々木倫子 | 小学館 |
漫画 | Ns’あおいこしのりょう | 講談社 |
漫画 | ナイチンゲールの市街戦鈴木洋史 / 東裏友希 | 小学館 |
360°ビュー
確認ドリル
看護師が使うハサミは、安全のために先が丸くなっている
呼吸数や脈拍を測定する看護師の時計は、秒針がなくてもよい
同じ病院の中でも看護師は、担当によって仕事の内容が違う
病棟看護師は、12時間交代制で入院患者の看護を行う
手術室で働く看護師の役割は、「器械出し」と「外回り」と大きく2つある
DMATは、災害発生から48時間以内に被災地へ派遣され、7日程度で撤退する
修学旅行や合宿などに同行して健康管理を行う看護師をツアーナースという
訪問看護には、子育て支援も含まれる