言語聴覚士

01 秘密のポケット

「話す」「聞く」「食べる」リハビリテーションの専門家、言語聴覚士げんごちょうかくし(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)が持つ道具といえば

  • 聴診ちょうしん

    飲みこみのリハビリの際に使用します。のどの音や、呼吸の状態を確認することに使います。

  • ペンライト

    口の中の動きや、構造を確認するために使います。食事やお話の際に必要な舌やのどの動きを確認しています。

  • 絵カード

    話す、聞く、読む、書く、の練習場面に使用します。言葉の長さや、生活で使う回数によって、難易度が変わります。

  • 鼻息鏡びそくきょう

    鼻息の様子を確認するものです。身体の麻痺まひによって、鼻とのどをつなぐ弁べんが麻痺し、鼻咽腔閉鎖機能不全びいんくうへいさきのうふぜんを起こすことがあります。鼻に空気がぬけると、フガフガとした話し方になったり、飲みこむ力が弱くなったりするため、鼻に空気がぬけているかどうかを確認します。

  • ペンと白い紙

    うまく言葉を話すことが難しい患者かんじゃさんとコミュニケーションをとることに使います。言語聴覚士が、文字や絵をかいて伝えることもありますし、患者さんが文字や絵をかいて伝えることもあります。

02 どんな仕事をするの?

「話す」「聞く」「食べる」という誰だれでも自然にしていることが、病気や事故、老化によるからだのおとろえなどで不自由になることがあります。また、生まれつきの障がいで困っている人もいます。言語聴覚士げんごちょうかくしは、ことばによるコミュニケーションや飲みこみ(嚥下:えんげが不自由な人に、リハビリテーションや相談などを行い、より良い生活を送ることができるようサポートします。言語聴覚士という職業は、比較的ひかくてき新しく全国的にも不足しています。高れい社会が進み続ける日本で、リハビリに関わる専門職としての需要じゅようはさらに増えていくでしょう。

言語聴覚士が行うサポートは、4つです。

①「コミュニケーション」:発声や発音の障がい、後天性こうてんせいの言語障がい(失語症しつごしょうなどのある方の症状しょうじょうや発生のメカニズムを理解し、リハビリテーションを行います。

②「聞こえ」:耳が聞こえない、聞こえが悪いといった聴覚ちょうかくの障がいのある方に、検査や訓練、補聴器ほちょうきのフィッティングなどを行います。

③「飲みこみ」:のどは声を出すほかに、食べ物や飲み物を飲み込んでからだの奥おくへと送る役割をしています。言語聴覚士は、飲みこみのリハビリテーションも行います。患者かんじゃさんの障がいや年齢ねんれいなどを考えながら「ゴックン」が、しやすくなるよう安全に食べられる動作を考えたりもします。

④「子どもの発達を支援しえん」:福祉施設ふくししせつや病院、学校などで聞こえの障がい、ことばの発達や発音、コミュニケーションに不自由をかかえている子どもたちの手助けをします。

言語聴覚士は、出産や育児などで一時的に職をはなれることがあっても、再就職が比較的ひかくてき容易な職種です。さまざまな経験が仕事に役立つ場面もたくさんあることでしょう。

また、日本言語聴覚士協会では、生涯しょうがい学習プログラムを実施してスキルアップもはかっています。生涯学習プログラムを修了した方で、言語聴覚士としての経験が6年以上の人は、「認定言語聴覚士」の資格取得に挑戦ちょうせんすることができます。資格は5年ごとに更新が必要です。

03 どんなところ(場所や場面)で働くの?

言語聴覚士げんごちょうかくしは、医療機関いりょうきかんだけでなく保健・福祉ふくし機関、教育機関など、はば広い領域で活躍かつやくしています。勤務先として最も多いのが病院や診療所しんりょうじょなどの医療機関です。次に多いのが介護老人保健施設かいごろうじんほけんしせつ、特別養護老人ホームなど高れい者を対象とする施設、障がい者福祉センターや療育センターなどの福祉施設です。比較的新しい職業ですが、言語聴覚士の仕事が知られるにつれ、さまざま場所で必要とされるようになってきました。医療・介護の現場だけでなく、学校教育や児童関連施設しせつの中で、言葉や聞こえに障がいがある子どもの支援しえんに携たずさわる人も増えてきています。

言語聴覚士がサポートする内容ですが、働く場所によって主な取り組みの中身が変わります。例えば、高れい者施設に勤務すると口から食べて飲みこむときのケアを行う機会が多く、療育りょういくセンターなどでは子どもの言語発達の支援しえんや発声、発語のトレーニングなどが中心になります。

働く場所

  • 医療機関

    大学病院や総合病院のリハビリテーション科、リハビリテーション専門病院、地域の病院、診療所しんりょうじょなどがあります。診療科で言うとリハビリテーション科、脳神経外科、脳神経内科、耳鼻咽喉じびいんこう科、小児科、形成外科、口腔外科こうくうげかなどです。

    病気やケガによる聞こえや言葉の障がい、飲みこみの障がいなどへの対処法を見つけるために検査や評価を行い、医師や看護師らと協力しながら機能回復のための訓練や指導、助言、再び社会で活動するための支援しえんを行います。

  • 介護・福祉施設

    介護老人保健施設かいごろうじんほけんしせつ、通所リハビリテーション事業所、訪問リハビリテーション事業所、特別養護老人ホーム、障がい者福祉しょうがいしゃふくしセンター、障がい者支援施設しょうがいしゃしえんしせつなどがあります。

    老人施設ろうじんしせつでは、介護かいごが必要な高れい者の自立を支援しえんするためのリハビリテーションを担当します。通所施設つうしょしせつでは、利用者の方が自分の家で安全に暮らせるように、コミュニケーションや飲みこみ、認知機能の向上のためのリハビリテーションを行います。

    障がい者支援施設では、ことばやコミュニケーションに関する訓練を行います。

  • 教育・児童向け施設

    小・中学校、特別支援しえん学校、児童相談所、療育りょういくセンター、肢体不自由児施設したいふじゆうじしせつや重症心身障害児施設じゅうしょうしんしんしょうがいじしせつ、言語聴覚士養成校げんごちょうかくしようせいこう、大学院などがあります。

    言語聴覚士と教員免許きょういんめんきょを持つ人が、ことばや発達のおくれのある子どもを対象に、小・中学校の「ことばの教室」「きこえの教室」や、特別支援学校などで指導します。近年は、自閉症じへいしょうスペクトラムや学習障害などの発達障害への対応も増えています。

    障がいがある子どもの発達を支援しえんする施設では、食べたり飲みこんだりする機能訓練のほか、ことばや吃音きつおん※1のサポート、コミュニケーションに関する訓練などを行います。

    • 吃音:言葉の障がいの一つで、同じ音をくり返したり、音がつまったりするなど、なめらかに話すことが難しい状態をいいます。適切な指導により改善することが可能です。
  • 行政機関

    公務員として保健所や保健センターで働く言語聴覚士げんごちょうかくしもいます。保護者から子どもの言葉の発達の相談を受けたり、病気や事故による障がいについて相談を受けたりします。

働く場面

  • 病院や施設、学校

    言語聴覚士げんごちょうかくしは、医師・歯科医師・看護師・理学療法士りがくりょうほうし・作業療法士さぎょうりょうほうしなどの医療いりょう専門職、ケースワーカー・介護福祉士かいごふくしし・介護支援専門員かいごしえんせんもんいんなどの保健・福祉専門職ふくしせんもんしょく、教師、心理専門職などと連携れんけいし、チームの一員として行います。

    医療いりょう機関においては、呼吸器リハビリテーション、難病患者かんじゃリハビリテーション、脳血管疾患等のうけっかんしっかんとうリハビリテーションの施設しせつ基準に言語聴覚士が追加されたことで、活躍かつやくできる病棟びょうとうや役割が広がっています。

  • 地域

    訪問看護ステーションや訪問介護かいごリハビリテーション事業所などに所属して、利用者の自宅を訪問し、一人ひとりの暮らしに合う指導を行います。言語聴覚士げんごちょうかくしによる訪問リハビリを、歯科の訪問診療しんりょうと組み合わせる病院も増えてきています。

    政府が推し進めている地域包括ほうかつケア※1においても言語聴覚士の活躍かつやくが期待されています。公民館など地域の公共施設しせつを訪ねて高れい者のみなさんが、心とからだの機能を保ち自宅で自立した生活を送れるようにサポートもしています。高れい者が誤嚥性肺炎ごえんせいはいえん※2を発症はっしょうし悪化させる割合が増えていることもあり、誤嚥性肺炎の予防や難聴なんちょう※3対策のための講話や体操指導などを行うこともあります。

    • 地域包括ケア:高れい者になっても住み慣れた地域で自立した生活を最期まで続けることができるように、必要な医療いりょう、介護かいご、福祉ふくしサービスなどを一体的に提供し、すべての世代で支え・支えられるまちづくりをすること。

    • 誤嚥性肺炎:うまく飲みこめなかった食べ物や唾液だえきなどが気管から肺に入り、炎症えんしょうを起こしてしまう病気。飲みこむ力が弱くなった高れい者に多い。

    • 難聴:聞こえにくい状態。

  • 教育・研究

    言語聴覚士げんごちょうかくし指定養成校で教員として言語聴覚士を目指す学生の教育・指導を行ったり、大学院など研究機関で言語機能の研究を行ったりする人もいます。

仕事の様子を動画で見てみよう

04 どうしたらなれるの?進学フロー

国家資格のため、試験に合格して資格を取得します。そのためには、まず言語聴覚士げんごちょうかくし養成校(文部科学省が指定医した学校、または都道府県知事が指定した言語聴覚士養成校)で学び、必要な知識と技術を身につける必要があります。養成校は、入学するのに年齢ねんれい制限はありません。社会人になってから志す人もたくさんいます。

進学フロー

インタビュー動画 実際に見てみよう

05 職業を知りたい時におすすめの漫画、書籍、ドラマなど
映画(DVD)英国王のスピーチ2010年ギャガ
映画(DVD)潜水服せんすいふくは蝶ちょうの夢を見る2010年角川映画
映画こえの形2016年ポニーキャニオン
マンガこえの形 全7巻大今良時(著)講談社コミックス
単行本こう見えて失語症しつごしょうです米谷瑞恵(著)、 あらいぴろよ(イラスト)主婦の友社
書籍言語聴覚士げんごちょうかくしになるには中島匡子作ぺりかん社

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