作業療法士
患者かんじゃが日常生活や、生活に必要な能力を取り戻すためのリハビリテーションを行う作業療法士さぎょうりょうほうしが、使う道具と言えば
ゴニオメーター
関節の動きが障害されているかどうか運動の角度を測る道具です。例えば利き手ききての肘ひじがのびたまま曲がらなければ、手が口に届かず食事を取ることが出来なくなります。今どのくらい動くのか、訓練をして効果があったのかを測ることで患者の気持ちを向上させるきっかけとなります。
打腱器だけんき
患者の筋肉の腱けんをたたいて脊髄せきずい反射の検査を行います。
消毒液
感染予防として必ず手の消毒をしてからリハビリテーションを始めます。
自助具
他人にたよらなくても日常で必要な作業を行えるようにサポートする器具です。握力あくりょくが弱くて、うまくにぎれない患者が持ちやすいように太くなっているスプーンや、足に手が届かない患者がくつ下をはくための道具(ソックスエイド)などがあります。作業療法士はこの自助具についての知識を持ち、市販しはんされている自助具がどのように役に立つのかを理解し、患者の状態に合わせたものを選定します。また、作業療法士自身が自助具を制作することもあります。100円ショップやホームセンター等で材料や道具を調達することもあります。患者のからだの状態、困っていることを把握はあくし、一人一人に合った道具を提供することも作業療法士の仕事です。
作業療法士さぎょうりょうほうしは、作業に着目した治療ちりょうとサポートをします。人は、作業をすることで元気になれます。作業を通して、患者かんじゃが元気に暮らしていけるように、からだだけでなく心の安定も支えます。食べる、着がえる、入浴するなど、日常生活のすべての生活行為こういが「作業」です。病気や事故、ケガなどで障がいのある人に、日常生活の中の動作や運動、ゲームなどを通して、心とからだに働きかけ、身の回りの動作がスムーズにできるように導きます。また、退院後も趣味しゅみや仕事など、地域や職場で、自分らしく生き生きと過ごせるようになることを目指して支えます。
理学療法士りがくりょうほうしが、「座る」「立つ」などの基本的な動作に関わることに対し、作業療法士は「指を動かす」「歯をみがく」「トイレに行く」など、日常生活をおくるうえで必要な機能回復をサポートします。
働く場所
作業療法士さぎょうりょうほうしの職場は、医療いりょう分野、福祉ふくし分野、介護かいご分野、保健分野、教育分野などがあります。
病院(リハビリテーション部)、リハビリテーションセンター
入院直後の急性期から回復期と呼ばれるリハビリテーション領域で、リハビリテーションチームの一員として患者かんじゃを支援します。対象となる病気も脳血管の病気、ケガ、整形外科の病気、呼吸器の病気、循環器じゅんかんきの病気、がん、神経筋の病気など、様々あります。
精神科病院
うつ病や統合失調症そうごうしっちょうしょう※1、神経症しんけいしょう※2、心身症しんしんしょう※3、パーソナリティ障がい※4、薬物・アルコール等の依存症いぞんしょう※5、認知症にんちしょう※6、てんかん※7など、精神面での病気をかかえる患者かんじゃの支援しえんをします。精神的な負担をやわらげたり、作業プログラムによる訓練などを行ったりすることで、患者の社会生活への復帰を目指します。
- 総合失調症:考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く病気。
- 神経症:ストレスからくる心の病気の代表で、不安障害ともいう。
- 心身症:心の状態が原因となって、体に病気があらわれたもの。
- パーソナリティ障がい:周囲の大多数の人とちがう思考や行動によって日常生活に問題が生じて、本人や周囲の人がなやんだりする障がい。
- 依存症:特定の何かに心をうばわれ、それがないと身体的・精神的な平常を保てなくなること。
認知症:様々な原因で脳の細胞さいぼうが死んでしまったり、働きが悪くなったりしたために障がいが起こり、生活する上で支障が出ている状態のこと。
- てんかん:発作的にけいれんを起こす病気。
小児病院
周産期の医療施設いりょうしせつが置かれている小児病院で働く作業療法士さぎょうりょうほうしもいます。発達期のリハビリテーションにおいては、大人向けの場合とは異なる知識や技術が必要で、また子どもの成長や発達に寄りそう仕事でもあります。
保健所
病気予防や健康相談など、地域の公衆衛生や福祉ふくしを推進する重要な意味を持つ場所となっているのが保健所や保健センターです。そこで公務員として働く作業療法士さぎょうりょうほうしもいます。市役所の高齢福祉課こうれいふくしかや健康増進課など、行政にたずさわる人もいます。
精神保健福祉センター
地域住民の精神的な健康を保持・改善するための施設しせつで、精神面での病気や依存症いぞんしょうなど福祉ふくしに関する仕事をします。例えば、講演や研修、精神保健福祉職に関わる人への技術指導、また地域住民のこころの健康に関する相談を受けることもあります。
認知症にんちしょう専門病院、老人保健施設しせつ、デイケア、在宅介護支援ざいたくかいごしえんセンター、特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター
年をとることによって、からだの機能や認知機能の低下、認知症にんちしょう、脳に損傷を受けたことなどが原因で日常生活に困難や不自由さをかかえる高齢者こうれいしゃに作業療法さぎょうりょうほうを行います。
訪問リハビリテーション
患者かんじゃの自宅へ訪問し、リハビリテーションを行います。患者は、子どもから高齢者こうれいしゃまで様々です。ヒアリングをして日常生活に必要な動作の訓練やアドバイス、介助者かいじょしゃへの指導を行います。
児童福祉施設ふくししせつ(療育りょういくセンター)
入所施設と通所施設があります。入所施設は、さまざまな理由で自宅での生活が難しい子どもたちを対象にしています。身体機能訓練や日常生活動作訓練、運動やアート、ゲームなどの自由な活動など、広く生活を見てサポートする必要があります。
発達支援しえんセンターや放課後デイサービスなどは通所施設です。通所施設では、ゆっくり発達する子どもたちの宿題をサポートしたり、料理や工作などを通して作る喜びや達成感を分かち合ったり、音楽や運動を通してリズム感覚やバランス感覚を養ったりしながら社会性や、コミュニケーション能力を育むよう支援をします。
保育所、幼稚園ようちえん、学校、特別支援しえん学校
日常生活や学習のしにくさを抱えている子どもの生きる力を支援します。子どもが家族とともに地域で生き生き自立して暮らしていけるように、心とからだに働きかけ支援します。
働く場面
災害現場(避難所ひなんじょでの支援しえん、被災者ひさいしゃ支援)
災害時に派遣はけんされる精神医療いりょうチームや災害支援しえんチームの一員として、被災された人々の心身機能、日常生活能力(廃用症候群はいようしょうこうぐん※1予防)、生活の質の維持向上に対し、働きかけ支援します。また、日本作業療法士協会にほんさぎょうりょうほうしきょうかいでは、「災害支援ボランティア登録制度」をつくって、ボランティア希望者の登録を常時受け付けています。
- 廃用症候群:長期間にわたって安静でいることや活動性の低下によって、からだに障がいが生じること。
海外(国際協力)
JICA海外協力隊では、病院や障害児者施設しせつ、特別支援しえん学校、地域において作業療法さぎょうりょうほうの実施じっし・支援、地域社会に根ざしたリハビリテーション活動の実践じっせん・普及ふきゅうなどを行います。対象は子どもから高齢者こうれいしゃまでとはば広く、病気や障がいは、派遣はけんされる国や地域の特性によって異なります。作業療法士の国家資格と3年程度の臨床りんしょうにおける実務経験が必要です。
仕事の様子を動画で見てみよう
作業療法士は、国家資格です。大学・短期大学・専門学校などの養成課程を卒業することで受験資格が得られ、国家試験に合格すれば作業療法士になれます。
インタビュー動画 実際に見てみよう
書籍 | 1リットルの涙 難病と闘い続ける少女亜也の日記木藤亜也 | 幻冬舎文庫 |
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DVD | 1リットルの涙監督:岡村力 | 東映ビデオ |
書籍 | だから、作業療法が大好きです!葉山靖明 | 三輪書店 |